柳野国際特許事務所

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特許について
基礎知識

 特許を出願して権利化するためには、いくつかの要件をクリアしなければなりません。特許は実用新案と異なり、特許庁審査官が審査を行い、要件をすべて備えたものだけが審査をパスして権利化されます。
 審査官は、以下の1〜8の要件をクリアしているか否か判断し、一つでも問題があれば、拒絶理由通知として出願人に通知し、釈明や訂正を求めることになります。

  1. 「発明」であること
     自然法則を利用した技術的な思想である必要があり、純粋なビジネスの方法や、ゴルフスイングの方法などは該当しません。ただし、新規なソフト処理を伴うビジネスモデルは発明に該当しますし、また、ゴルフスィングを補助する練習マシンなども発明に該当します。

  2. 産業上の利用可能性があること
     事業として成立しないものや、明らかに実施できないようなものは該当しません。

  3. 新規性があること
     特許出願の際に、世の中(全世界)で知られていない内容である必要があります。同じ内容についてすでに特許出願され、公開されている技術内容については、出願しても拒絶されます。自分自身の行為であっても例外ではありません。出願の前に守秘義務のない人に内容を話してしまったり、新聞等で発表してしまったり、カタログに載せてしまったり、発売してしまった場合は、特許を受けることができなくなります。注意が必要です。
    (ただし、例外規定はあります。)

  4. 進歩性があること
     発明の内容が、出願時の当業者の技術水準(殆どの場合、先行特許出願の公開公報が引用される)から容易に考え出せない程度に進歩していないと拒絶されます。上記3の新規性を有していても、この進歩性を有していないと、独占権を与える価値なしということで特許権は付与してもらえません。新たな効果を生じない設計変更や、単なる寄せ集めなどは進歩性がありません。この進歩性違反により拒絶されるケースが大半となります。従来の技術からどれほど進歩しているか、基本的なルールに則って審査官が判断することになります。

  5. 先願の発明であること
     同じ内容であれば、一日でも出願日が早い人が権利取得できます。

  6. 出願後に公開された先願明細書に記載された発明でないこと
     特許出願は出願から1年6月で公開され、公知の技術文献となります。したがって、公開以降に他人が同じ内容について出願しても新規性違反となり、多少内容が異なっていても進歩性が判断されることとなります。ところで、他人の先行特許出願があっても出願時に未公開であれば新規性・進歩性の引用文献とされませんので、同じ内容についても特許されるという不都合が生じます。法はこのような不都合を解消するために、未公開の先行特許出願と同じ内容についての出願は排除することとしています。ただし、同じ内容の出願は排除するものであり、上述の4における進歩性がなくても実質的な違いさえあれば拒絶されません。

  7. 出願書類(明細書等)の記載不備がないこと
     出願書類には、発明の内容を他人が読んで参考にすることができる程度(実施できる程度)に具体的に書く必要があります。従来の技術/その問題点/発明の内容/どのように問題点が解決されるか/具体的な実施例(図面を用いたり)/できれば変形例などを記載します。基本的に出願した後に新たな内容を追記することはできませんが、1年以内であれば、国内優先制度という制度を使って新たな内容を補充することができます。発表前に急いで出願する場合など、とりあえず発明の内容、骨格を出願し、後で変形例や実験データ等を補充する方法としてよく利用されます。

  8. 不特許事由に該当しないこと
     公序良俗違反の内容は排除されます。特許制度は、独占権を与える代わりに、技術を隠さずに公開させ、世の中の人がそれを参考にしてレベルアップを促進してゆく制度であり、その趣旨に合致しない内容、公開に適さない発明は排除されます。

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特許権の効力


 上記要件を満たし、審査をパスして登録料を納めると、特許権が付与されます。特許権とは業として特許発明の実施をする権利を専有するものです。
 よく誤解されるのは、「特許権が取れたから、特許発明についてはまったく安全に実施できる」と思われることですが、これは間違いです。よりベーシックな基本特許が存在していれば、特許発明を実施する際にその基本特許も利用しないと実施できないこととなり、したがって許諾を得ずに実施すれば基本特許の侵害になってしまいます。

 このように、特許権とは特許発明を確実に実施できるという権利ではなく、他人が真似することを排除できる権利(排他的権利)です。すなわち、基本特許の権利者も、応用特許の発明については実施できなくなってしまうのです。特許権を取得しても、その周辺技術の権利化を怠ると、他人に特許を取られてしまい、事業に支障がでてくる虞があるのです。ある発明がなされ、特許出願を検討する際には、その周辺技術・応用技術についても出願の必要について検討がなされなければなりません。

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権利期間


  審査をパスして登録された日から権利が始まりますが、満了するのは出願日から20年経過日となります。  特許の権利期間は20年間といいますが、出願から20年経過日に満了するので、実際には審査に時間がかかれば、その分権利期間も短くなってしまいます。
 以前は審査請求期間が7年あり、しかも審査に時間がかかっていたことから、権利になってもあと4、5年しか残っていないというケースがよくありました。近年は審査が早くなり、審査請求期間も3年に短縮されましたので、概ね1〜2年で最初の審査結果が出てきます。
 審査請求はいつでもできますので、出願と同時に審査請求し、早期審査請求をすれば出願から数ヶ月で権利にすることもできます。このように早く結果を出すことが可能になっていますので、重要な発明については数ヶ月で結果を出し、拒絶されても未公開段階なので、よりブラッシュアップした内容で再度出し直しするという手法も可能となっています。


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