柳野国際特許事務所

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商標の概略
 

  商標とは、読んで字の如く、品又はサービス(役務)の章であり、一定の商品やサービス(役務)のカテゴリーについて商標権を取得すると、日本国内において独占権が生じ、10年毎の更新時期において確実に更新申請を行えば半永久的に独占権が得られるものです。

 商標法第2条に、この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、自己の業務に係る商品又はサービス(役務)について使用するものと定義されています

  即ち、至るところにおいて目に触れる商品の名前やマーク、又は銀行、証券などの金融業、宅配便、タクシー、鉄道などのような運輸業、ホテルや旅館などのような宿泊業、ファーストフード、レストランなどの飲食業等が提供する無形のサービスについて使用される名前やマーク等であって、他人の同種の商品又はサービス(役務)と区別し、出所の混同を防ぐため他社と識別できるような特徴のある名前やマーク等に権利が付与されます。

 また、米国や香港などの一部の国では音や臭いも商標として認めている国もありますが、日本では今のところこれらは商標として成立しません。

商標権の効力

1. 独占的に使用することができる。
2. 他社は、同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品又はサービス(役務)に使えなくなる。
3. 他社に対し損害賠償等を請求できる。


 具体例をあげて説明すると、

  例えば、A社がスナック菓子にAという商標を付けて販売したところ、消費者の間で有名になったとします。 ところが、B社がフリーライドして同じようなスナック菓子に、全くA社と同じAという商標を付けて売り出したとします。 消費者はAという商品名を手掛かりにB社のスナック菓子とは気付かず購入したとします。 その結果、A社のスナック菓子の販売量が落ち、大きな損害となります。

  また、仮にB社のスナック菓子に品質などにおいて問題があったならば、A社の商品ではないものの、その風評によって消費者の大切な信頼をも失ってしまうことにも成り兼ねません。

  このような場合、A社がそのスナック菓子について商標権を取得しておけば、B社の無断使用は商標権の侵害行為であり、B社に対して直ちにその使用の中止等を請求できます。

 また、侵害行為によって損害を被った場合には損害賠償を請求することができます。 また、前記のようにB社の商品が欠陥品で、商標権者(A社)の業務上の信用が害された場合には、信用回復の措置として、謝罪広告を求めることができます。

 サービスマークについても同様です。


4. 更新すれば、半永久的に独占権が維持される。

  特許権、実用新案権、意匠権には存続期間が決められており、その期間が過ぎると権利は消滅します。
 しかし商標権は、半永久的な権利です。 商標権の存続期間は、登録の日から10年(5年分割も可能)を一区切りとし、引き続き使用を継続したい場合は、何度でも更新ができます。


5. 第三者に対し使用許諾や譲渡等の設定ができる。

  商標権者となれば、第三者に対し、その商標の使用についてのライセンス契約をすることができます。
  例えば、関連会社やフランチャイズの加盟店に商標の使用を許諾し、有利な立場を確保することができます。  また商標権自体を第三者に譲渡することもできます。

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商標特有の制度

不使用取消審判制度

 日本では、使用意思さえあれば商標登録をすることができる登録主義を採用しています。しかし登録後、継続して3年以上商標を使用していなければ、不使用取消審判の請求によって商標権が取り消されることがあります。
 これは商標独特の制度であって、特許・実用新案・意匠にはありません。
 この制度がもうけられた理由としては、登録後使用していなくても更新は可能であるため、実際には一度も使用されていない商標が永久的に独占権を維持することを防止するためです。

 商標法(商標法第50条)は、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録登録の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定し、第三者からの請求によって不使用商標の登録を取り消す不使用取消審判の制度を設け、商標の本来の目的を果たしていないとされる商標を排除し、その商標を本当に使用したい者に独占権が得られるよう、このような制度によって調整を図っているのです。  尚、取消しを免れるためには、被請求人が使用している事実を立証する必要があります。

防護標章登録制度

 商標法第64条は、使用する予定のない商品や役務(正確には登録商品の指定商品等と非類似の商品等)についても、著名な商標を有していれば権利として保護され、他人の権利化や使用を阻止できる防護標章登録制度を設けています。

  商標は、上記した「不使用取消審判」という制度により、商標権を取得してもその商標を使用していなければ取消しになるというリスクを持っています。

 従って、使用予定のない商標は登録しないのが原則ですが、自己の著名な登録商標で、指定商品等と非類似の商品等について実際には使用しないが、他人が同じ登録商標を使用することで自社商品と混同を生じる恐れがある場合には、その商品等について防護標章として登録し保護されます。

参考資料
特許庁 「商標チャンネル
     知っておこう商標のキホン〜商標制度の概要〜


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商標の登録要件


商標が登録されるためには、自他商品(役務)の識別力を有することが必要です。(商標法第3条)

 「自他商品(役務)の識別力」とは、その商標を付した自社の商品(役務)を他社の商品(役務)と区別させる商標の基本的機能のことであり、その機能を有さない商標は、商標としての本来の目的を果たし得ないため、登録できません。

自他商品(役務)の識別力がない商標の例を以下に示します。


1. 普通名称(商標法第3条第1項第1号)

「商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録することができません。  商品又は役務の普通名称とは、取引業界において、その商品又は役務の一般的名称であると認識されるに至っているものをいいます。

 例えば、

 商品「アルミニウム」についての商標「アルミ」
 商品「パーソナルコンピューター」についての商標「パソコン」
 商品「板状チョコレート」についての商標「板チョコ」
 役務「航空機による輸送」についての商標「空輸」
 役務「靴の修理」についての商標「靴修理」

2. 慣用商標(商標法第3条第1項第2号)

「商品又は役務について慣用されている商標」は登録することができません。
 
商品について慣用されている商標(慣用商標)とは、もともとは識別標識たり得たものが、同種類の商品又は役務について、同業者間で普通に使用されるようになったため、もはや自己の商品・役務と他人の商品・役務とを識別することができなくなった商標のことをいいます。

 例えば

 商品「清酒」についての商標「正宗」
 役務「興行場の座席の手配」についての「プレイガイド」

3. 記述的商標(商標法第3条第1項第3号)

「商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録することができません。

 例えば

 商品の販売地  → 商品「洋服」についての商標 「東京銀座」
 商品の効能   → 商品「薬剤」について商標 「万能」
 商品の価格   → 商品「ボールペン」について商標 「百円」
 商品の生産の方法→ 商品「コーヒー」について商標 「炭焼き」
 商品の生産の時期→ 商品「清酒」について商標  「寒造り」
 役務の提供の場所→ 役務「自動車による輸送」について商標 「関東一円」
 役務の質    → 役務「飲食物の提供」について商標 「高級料理」
 役務の効能   → 役務「入浴施設の提供」について商標 「疲労回復」
 役務の数量   → 役務「パソコンの教授」について商標 「1週間コース」
 役務の提供の方法→ 役務「洗濯」について商標 「ドライクリーニング」
 役務の提供の時期→ 役務「語学の教授」について商標 「夏休み講座」

 4. ありふれた氏または名称(商標法第3条第1項第4号)

「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録することができません。
 商標審査基準では、次のように定められています。ありふれた氏、業種名、著名な地理的名称(行政区画名、旧国名および外国の地理的名称を含む。)等に、「商店」「商会」「屋」「家」「社」「堂」「協会」「研究所」「製作所」「会」「研究会」「株式会社」「K.K.」「Co.」・・・等を結合してなる商標は、原則として「ありふれた名称」に該当するものとする。

 例えば、「鈴木」、「YAMADA」、「佐藤商会」などがこれに該当します。

  5. 極めて簡単で、かつ、ありふれたもの(商標法第3条第1項第5号)

「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」は登録することができません。

 商標審査基準では、次のように定められています。 仮名文字(変体仮名を含む)1字、1本の直線、波線、輪郭として普通に用いられる△、◯、□、◇、月桂樹若しくは盾の図形、ローマ文字の1字若しくは2字からなるとき、ローマ文字の1字にその音を仮名文字で併記したとき、または、ローマ文字の1字の音を仮名文字で表示したときは、本号の規定に該当するものとする。

 例えば、「オーオー」「WA-7」「200」「シックスティーン」「777」などがこれに該当します。

 6. その他、識別力がないもの(商標法第3条第1項第6号)

「その他、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することのできない商標」は登録することができません。

 例えば、以下のようなものが該当します。

・地模様のみからなるもの
・「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」及び「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、又は果実飲料を主とする   飲食物の提供」について  「愛」、「純」、「ゆき」、「蘭」、「オリーブ」、「フレンド」など
・商慣習上、「Net」「Gross」などのように、その商品やサービスの数量等を表示する場合に用いられる文字
・現元号を表す「平成」の文字 ・標語(例えば、キャッチフレーズ)
 「環境衛生をシステムで考える」、「さわやかさをお届けします」、「BECAUSE YOU LOVE NICE THINGS」、
 「たっぷりカリフォルニア太陽の味」、「明石・鳴門のかけ橋に明日の日本の夢がある」、
 「緑をおくる山口のお茶」、「パールブリッジを渡ってきました」など。

尚、商標法第3条第2項では、

 上記 3. 〜 5. の不登録要件に掲げるような商標であっても、使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できるようになったものは登録を受けられると規定しています。

 商標が使用によって識別力を有するに至ったことについては、実際に使用した商標及び商品、役務や使用した期間、地域、生産量、広告回数等を証明する証拠書類の提出が必要となります 。
 登録された事例としては、以下のようなものがあります。

 指定商品「ウイスキー」についての商標 「角瓶」
 指定商品「ハム」についての商標    「ニッポンハム」
 指定商品「ぎょうざ」についての商標  「宇都宮餃子」
 指定商品「メロン」についての商標   「夕張メロン」


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