柳野国際特許事務所

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Q1.国内優先権制度とは?

A.開発過程では連続して新しいアイデアが生まれてくることが多いはずです。しかし、この発明に係る出願を開発が終了するのを待っていた結果、他社に先に出願されると貴社の出願は権利化できません。そこで、基本発明を先に出願しておいて、その後の改良発明を取り込んだ包括的、網羅的な出願へと発展させて権利化することを可能とするのがこの制度です。先の基本発明に係る出願(先の出願)の日から1年以内に生まれた発明であれば関連する発明を含めて、国内優先権を主張することにより1出願にまとめることができ、新たな出願(後の出願)に係る発明のクレームで先の出願当初の明細書・図面に含まれるものの新規性・進歩性等の判断の基準日は先の出願日となります。 後の出願で追加したクレームの新規性・進歩性等の判断の基準日は後の出願(国内優先権主張出願)の現実の出願日となります。「発明の単一性(特許法第37条、特許法施行規則第25条の8)利用型」、「上位概念抽出型」、「実施例補充型」の類型があります。



Q2.パリ条約による優先権と国内優先権との違いは?

A.制度の目的が異なります。パリ条約による優先権制度は外国出願に伴う時間的・予算的猶予を付与するためのものですが、国内優先権制度は改良発明等の一括審査のための制度です。そのために要件・効果も以下のとおり異なっています。
(1)パリ条約による優先権主張の場合は優先権主張出願時に基礎出願が有効に存続している必要はありませんが、国内優先の場合は優先権主張出願時に基礎出願(先の出願)が有効に存続していることが必要です。
(2)パリ条約による優先権主張の対象は特許・実用新案・意匠・商標ですが、国内優先の対象は特許・実用新案だけです。
(3)パリ条約による優先権主張の場合は優先権主張出願をしても基礎出願に何らの影響もありませんが、国内優先の場合は基礎出願は原則として出願から1年4月で取り下げになります。

 また、パリ条約による優先権は、パリ条約の同盟国民(例えば米国人)が同盟第1国(例えば米国)にした正規かつ最先の出願に基づいて、同盟第2国(例えば日本)に所定期間内にパリ条約による優先権を主張した場合、同盟第1国の出願内容に含まれる同盟第2国出願のクレーム(Q3-1参照)は、同盟第1国の出願日を基準にして審査をしてもらえるという利益が与えられるものです。これに対して、国内優先権は日本国内の先の出願に基づいて国内優先権主張出願を行った場合に、先の出願内容に含まれる国内優先権主張出願のクレーム(A3-1参照)は、先の出願日を基準にして審査をしてもらえるという利益が与えられるものです。国内優先権の主張により、内外人の実質的な不平等が解消される、PCT出願の自己指定が可能になる、特に補正の制限が厳しい現行法下で包括的で漏れのない権利化の取得が可能になる、等のメリットが得られます。